国東市で車なし生活【2日目/自転車②】

前回の記事:国東市で車なし生活【1日目/徒歩】
      国東市で車なし生活【2日目/自転車①】

【くにさきサイクリングロード】

風は強いが海は青く、向こうにうっすらと四国が見えた。まるで佐渡のようだ、とつい思ってしまう。私の故郷である新潟市では夕日が日本海に沈み、天気のいい日は海の向こうに佐渡島が見える。海に沈む夕日が見たくて豊後高田市に住みたいと思っていたけれども、四国を望む国東市の海にもなんだか懐かしさを覚えた。国東市もいいかもしれないなあ、と考える。
もちろん、この時期の日本海とは比較にもならないほど穏やかで、とにかく青い。透明度も高く、浅瀬では海の底が見える。あまりに美しいので「入れるんじゃないか?」と思ってしまい、砂浜におりて手を浸してみたら(当然だが)思わず手を引っ込めてしまうほど冷たかった。濡れた手に風が当たってじんじんと冷える。コートも着ずに軽装で来てしまったけれど、そういえばまだ2月なのだ。「九州は意外と寒い」と思っていたけれど、そう考えるとやはりかなり暖かい。
IMG_3596.JPG

近所の方だろうか、女性の二人連れとすれ違う瞬間「こんにちは」と声をかけられた。それが心地よかったのでその後すれ違う(または追い越す)すべての人に「こんにちは」と声をかけてみたところ、男女問わずほぼ全ての人が「こんにちは」といい笑顔で返してくれた。驚いた。そして驚いている自分にも驚いた。新潟はそんなに愛想のない土地だっただろうか。近所ならば挨拶もするし、それなりに返ってくる。しばし考えてようやく、私がそもそも知らない人に挨拶することがなかったのだな、と思い至る。新潟でもこちらから挨拶してみたら返ってくるのかもしれない。しかし、この日すれ違った人たちには「挨拶し慣れている」感じがあった。たかが挨拶なのだけれども、なんとなく自分が受け容れられているような気がして心があたたかくなる。素敵なところだな、と思う。


【富来エリア】

「富が来る」と書いて「とみく」と読むという、なんとも縁起の良い名前がついたこのエリアには、富来神社と呼ばれる神社があり、宝くじ(=富くじ)を買ってお参りするといいとか外れくじを持っていくと次は当たるとかいろいろな言われがあるようだ。「開運ロード富来路(とみくじ)」と名付けられた約10キロの道(10m×1000で「とうせん」=「当選」に掛けているらしい)があり、そのスタート地点にあたる富来港には「マネーき猫」だとか「願い橋叶い橋」だとか些かあやしいモニュメントが並んでいる。個人的にはもともとの良さが失われてしまうようでもったいないと思ってしまうが、地元の人の「なんとかして盛り上げたい」という意気込みを感じる場所だ。
IMG_3601
富来港のそばには怪しい看板が。この奥の公園に招き猫の像がある。


【松風】

富来小学校を過ぎたあたりに「海鮮丼」「たこちゃんぽん」とのぼりが見えた。まだ新しそうな店構えで、店内は明るい。当初の予定通りたこちゃんぽんを頼むと「具沢山でちょっと量が多いですけど、大丈夫ですか?」と奥さんが聞いてくれた。朝ごはんも食べずに自転車を漕いできてすっかり空腹だったので「むしろありがたいです」とお願いした。
外にいる間は気がつかなかったが、随分身体が冷えていることに気づく。熱の戻ってきた手がじんじんとかじかむ。温かいお茶が嬉しい。「どちらから?」と聞かれたので「新潟です」というと「えーー!!」とここでもまた驚かれた。「国東市の地域おこし協力隊の面接があって」というと喜んでくれて、こちらまで嬉しくなってしまう。
たこちゃんぽんは、たこのつみれと、たこいかえびがたっぷりと入った贅沢な一品だった。美味しくいただいて帰ろうとすると、奥さんが「これ、私からお土産」とアップルパイをくださった。恐縮するが「せっかく新潟から来てくれたんだから」というのでありがたくいただくことにする。ご家族そろって「面接がんばってね」と送り出してくれて、私も「また来ます」と約束して店を出た。
IMG_3603.JPG
たこがごろごろ入っている。
柚子胡椒(右)を入れるとまた風味が変わって美味しい。


【今日のまとめ】

海沿いは平坦な道が続くので、自転車での散策にはちょうどいい。ただ、国東半島のいちばん国東半島らしい部分は山にある(と私は思っている)上、ひとつひとつの寺社が意外と離れているので、自転車のみで観光するのはなかなか厳しそうだ。
くにさきサイクリングロードのマップに「ハラハラドキドキ」と書いてあったが、そんなこともないだろうと高をくくっていたら思いの外ドキドキだった。数カ所行き止まりがありサイクリングロードを外れて国道を通らされるのだが、それが面白い。景色も変わるし、気が抜けない感じがいいのだろうか。手元の地図と道沿いの案内板とを見比べながら進むのは、まるでオリエンテーリングのようだった。今回は寒くて富来で折り返したが、春になったらもっと遠くまで行くのも楽しそうだ。
そして、松風のアップルパイはりんごがたっぷりでとても美味しかった。

国東市で車なし生活【2日目/自転車①】

前回の記事:国東市で車なし生活【1日目/徒歩】

今日は旧正月。海から昇る初日の出を拝もうと夜明けとともに目を覚ましたが、残念ながら曇りだった。


【国東市サイクリングターミナル】

自転車を借りるべく、宿泊先のすぐ隣にある「道の駅くにさき」へ向かった。しかし建物が思いの外小さい。中に入ると完全に直売所だ。いったいどこで自転車が借りられるのだろうと思ったら「道の駅くにさき」は施設の総称で、海まで続く公園のような広い敷地に、観光案内所「国東市サイクリングターミナル」と飲食店と物産館と直売所がそれぞれ独立して建っている。木立の向こうが「国東市サイクリングターミナル」だった。
受付で「自転車を借りたいんですけど」と聞くと若い女性が応対してくれた。「どちらからですか?」「新潟です」「ええ!なんでまた」というやり取りを経て、ここまで来た経緯を伝える。すると彼女は「私も外から来たんです」と言って、大分市の出身であること、国東市に住み始めて1年以上経つこと、そして空き家を改修して住んでいるということを話してくれた。俄然私のテンションが上がる。「私も空き家に住みたくて!」と言うと「なんだったら今晩うち来ます?」と誘ってくれた。もちろん行くしかない。とりあえず連絡先をいただいてから、自転車の話に戻った。

「今日はどのあたりに行かれます?」「山のほうに行ってみたくて」と決めてないなりに漠然と答えると、「地図で見ると近く見えますけど、この辺から結構山ですよ」と地図を指しながら教えてくれた。「今日は風も強いし」と勧められたのは富来エリア。ここから海沿いを10キロほど行ったところにある。あれこれマップやガイドを見せてもらいながら、富来にある「松風」で「たこちゃんぽん」を食べて戻るというコースを辿ることにした。
IMG_3652.JPG
国東市の飲食店が30店舗掲載されている、国東市観光協会制作のフリーペーパー。
ざっと見た感じ、とり天とたこ飯が国東市の名物のようだ。


【くにさきサイクリングロード】

この道の駅くにさきを中心として、海沿いを南北にサイクリングロードが整備されている。(昨日空港から宿泊先まで歩いていたときにも看板を見かけた。)富来まで、国道ではなくこのサイクリングロードを通ることにした。「(行き止まりありのハラハラドキドキ)くにさきサイクリングマップ」という手作り感のある地図をもらう。フォントが少し小さくて気づくのが遅れたが、よく見ると名前がやばい。行き止まりってなんだろう…と思いながら、道の駅を出て川沿いを海へ向かった。
IMG_3651.JPG
サイクリングロードの各ポイントが画像と文章で説明されていてわかりやすい。
よく見るといちばん上に赤い文字で「行き止まりありのハラハラドキドキ」と書かれている。

続きはこちら:国東市で車なし生活【2日目/自転車②】

国東市で車なし生活【1日目/徒歩】

国東半島を(予算の都合等で)車を借りずに旅しようとした場合、いったいどれくらい見てまわれるのかもしくは見てまわれないのか。試しに、3日間レンタカーを借りずに過ごすことにした。

正午前に大分空港に着いた。
Googleマップによれば、予約しているホテルまで徒歩で1時間36分かかるらしい。それくらいなら歩けると踏んで、タクシーは使わず徒歩で向かってみることにする。ただし「歩き始めて30分後に『おなかもすいたし休みがてら昼食にしよう』と考えはじめるが、まわりに飲食店がなく空腹のままさらに1時間ただひたすら歩き続けるしかない」というケースを考えて(国東半島にはじめて来たとき、とりあえず空港から宇佐市に向かってしまったら道中で飲食店が本当に見つけられず、空腹のまま1時間ほど山道を運転したのでちょっと怯えている。)空港で少し早い昼食をとってから出発した。
今回予約した「ヴィラくにさき」(素泊まり6000円)は、空港へ続く国道沿いにある。地域おこし協力隊の面接が行われる国東市役所が徒歩圏内であることがいちばんの理由だが、近くの「道の駅くにさき」で自転車のレンタルを行っている(らしい)という情報と、国道沿いにあるのでバスが通っているのではないかという期待から決めた。道中では小雨がぱらついたり、菜の花の一群に心奪われたりして結局2時間ほどかかってしまったが、歩道は広くて歩きやすく飲食店も(国道沿いだし)数軒あって、空港からでも(気合いさえあれば)充分歩ける距離だといってもいい(ような気がしなくもない)。
ホテルに着いたら早速自転車を借りに行こうと思っていたのだが、ホテルの人に「5階に大浴場と岩盤浴がございます」と言われた瞬間に気持ちが完全に風呂に向いてしまい、「歩いて疲れたし、汗もかいたし」とかなんとか言いつつ誰もいない大浴場と岩盤浴とをすっかり堪能してしまった。気づいたら道の駅はすでに閉まっていて(午後5時までらしい)、今日は空港からホテルに着いただけで終わった。

明日は自転車を借りようと思っているのだが、やはり車がないとこのまま引きこもってしまうのではないかと若干の不安を抱いている。