豊後高田市でも地域おこし協力隊の募集が始まり、迷う。

豊後高田市から新潟に戻って1週間後、見慣れない市外局番から電話が来た。

「豊後高田市役所地域活力創造課の伊藤(仮名)ですが」
先日、土曜日も休日出勤で家探しに付き合ってくださった伊藤さんだった。「その後いかがですか?他の物件情報とかご覧になりました?」と聞く伊藤さんの声は、電話越しでもあたたかい。あの時は楽しかったなーまた伊藤さんに会いたいなー、とほんわかしかけてふと現実に返る。そうだ、私はあろうことか(?)豊後高田市の隣の国東市の地域おこし協力隊に応募してしまったのだ。
「いえ、あの、」実は、と言いかけて一瞬ためらい、結局「まだです」とだけ答えた。たぶん伊藤さんは「そうですか」と言って、空き家バンクのことやお試し居住の話をしてくれたと思うのだけれど、あまり記憶にない。
地域おこし協力隊のことを伊藤さんに話すべきだろうか。そもそも、豊後高田市と国東市はいったいどういう関係なんだろう。燕市と三条市のようなライバルなんだろうか、それとも豊後高田市がリードしているという認識なんだろうか。そんなことを考えているうちに「また何かありましたらご連絡くださいね」と電話を切る流れになってしまったので、「すみません、実は…」と切り出した。

国東市の地域おこし協力隊に応募してしまったけれどもし落ちたら豊後高田市に住みたいと思っている、ということをお伝えすると、なんと伊藤さんは「豊後高田市でも地域おこし協力隊を募集していますよ」「もし仕事内容にご興味があったらぜひ募集してみてくださいね」なんて言う。そんなばかな。大分県での募集は全部確認したはずだ。しかし、地域おこし協力隊のサイトを確認してみると、たしかに豊後高田市の募集が見つかった。ほんの2日前に掲載されたばかりで、募集締切は3月下旬、採用は5月1日からとなっている。伊藤さんから教えてもらわなければ知らないままだっただろう。
これはもしかして、国東市の募集は結局落ちて豊後高田市に行く流れになるのではないか?と考えた。

しかし翌日、国東市役所から電話が来た。「この度は地域おこし協力隊にご応募いただきありがとうございました」と物腰柔らかい印象の声の男性で、面接の日程の連絡だった。書類審査は無事通ったらしい。電話口の丁寧な対応になんだかほっとする。もし国東市の選考に受かったならそれはそれでいいのかもしれない、と思い直す。

とりあえず今月21日に国東市で面接だ。その先のことはまだ何ひとつわからない。

豊後高田市で家を探す【その3】

前回の記事:豊後高田市で家を探す【その1】
      豊後高田市で家を探す【その2】

翌日は、真玉温泉の奥にある空き家へ向かった。
温泉施設「スパランド真玉」の前を通り過ぎながら「この近くなら風呂が多少壊れていても温泉に通えてむしろ素敵」という妄想が一瞬膨らむが、伊藤さん(仮名)の車が容赦なくどんどん山へと向かうので諦める。ゆるく曲がった道の先に突然立派な石造りの鳥居が現れたりして、なんだかわくわくする土地だ。崖の上へと続く謎の階段、お寺や磨崖仏(らしきもの)、ジブリ映画に出てきそうなどっしりとした木。車を停めて見てまわりたい衝動に駆られながら伊藤さんを追うと、崖のふもとに目的の家があった。車から降りて開口一番「ここすごいですね!お寺とかいっぱいあって!」と伊藤さんとオーナーの小川さん(仮名)に言うと、「ふーん、そういうもんかねえ」とふたりともぴんとこない様子だった。


【空き家を見学する】

この家の値段は50万円(応相談)。いったいどんな家なのかと正直不安もあったが、玄関を入ると思っていたよりも明るく小綺麗だった。平屋建ての空き家は以前雑貨屋だったそうで、家の一部が店舗スペースになっている。ガラスの引き戸はカーテンがかけられていて、こぢんまりとしたスペースには今も商品棚が置かれていたままだ。

間取りによると、家全体が裏手の崖に沿ってすこし歪な形になっている。和室が5部屋並んでいるが、奥の2部屋は崖が近いために空気が通らず、湿気で畳がだいぶ痛んでいた。(人が住んでいれば大丈夫だそうだ。)台所に続く和室には掘りごたつが設けられていて、思わずテンションがあがる。昔は練炭で暖をとっていたそうだが、今は白熱灯が設置してある。こたつ布団があればすぐにでも使えそうだ。
小川さんによると、ガス水道は使わなくなって10年ほど経っているとのこと。詳しいことは点検しなければわからないが、おそらく改修が必要だという。風呂のボイラーも壊れているので直さなければ使えない。改修費用がどうしてもかかってしまうため「買った人の好きなように直してもらえればそのほうがいいかと思って」という意味でこの価格だそうだ。
肝心(?)のトイレは当然汲取式で、なぜか極端に狭い。昔ながらの段差のある和式トイレに洋式便座が設置されているのだが、座るとすぐ目の前が扉という配置でどう考えても落ち着かない。(この物件最大のネックだ。)しかもこのあたりは下水道が通っていないという。改修するならば合併浄化槽になるが、トイレが台所と離れているため費用は嵩むだろうとのお見立てをいただいた。

「ここらへんも空き家が多いんだよ」と小川さんは言った。「ほら」と示された田んぼの向こうには、1階部分が崩れかけている2階建ての立派であっただろう家が見える。「ああなったらもう壊すしかない」らしい。伊藤さんが「今、大家さんが責任を持って壊さないといけないような法律をつくってるところなんだわ」と教えてくれた。そうか、もしこの家を買ったとしたらいずれはこの家を売るか壊すかしなければならないのだな、と考える。
(参考:空家等対策の推進に関する特別措置法案(衆議院)

「(リフォームに興味があって)床の張り替えとかしてみたいんです」とふたりに話すと、「ちょうどいい、隣が大工さんだから」と小川さん。さらに「ここのすぐそばに仙人みたいなおじいちゃんが住んでいて、豊後高田市に移住してもう10年になるの。一度話を聞きにいってみるといいかも」と伊藤さんが教えてくれた。素敵なご近所さんがいらっしゃるようで、一層この物件に興味がわいた。


【今日のまとめ】

土地の雰囲気、店舗スペース、掘りごたつ。(トイレ以外は)とても魅力的な家だった。
伊藤さんに「結構いいなって思ってます」と話すと、まずは業者さんにガス水回りの点検をしてもらって、改修が必要かどうか、必要であればいくらかかるか見積りを出してもらうといいと教えてくれた。そこから先は市役所を介さず、私とオーナーである小川さんの間のやり取りになる。(トラブル防止のために不動産業者が入るが、その費用は市が負担してくれる。)
その一方で、やはり所有はちょっと…という気持ちもまだある。1年くらい賃貸に住んでみてからもう一度考えればいいんじゃないの?と、私の理性は言っている。今回は賃貸物件をひとつも見なかったし、もう少し時間をかけて見てまわってもいいかもしれない。

豊後高田市で家を探す【その2】

前回の記事:豊後高田市で家を探す。【その1】

翌朝、豊後高田市役所で伊藤さん(仮名)と待ち合わせた。
この日向かった空き家は旧香々地町に位置しており、市役所から車で約30分ほどだという(最寄りの宇佐駅からは約40分)。伊藤さんの運転する車を追って、海沿いの国道213号線を北へ走る。この道路は「日本の夕日百選」にも選ばれた真玉海岸を通る眺めのいい道で、バスも通っている(1日8本程度)。スーパーやホームセンターも点在する比較的便利な道だ。
213号を逸れ、川沿いを山のほうに入っていくと田畑が広がっている。(これだけ国道から離れてしまうと送迎なしで人に来てもらうのはちょっと無理だな、と思う。)川沿いなので圧迫感はないが、自転車どころか人ともすれ違えないのではないかと思うほど細い道を進み、目的地にたどり着いた。


【空き家を見学する】

大正時代に建てられたというその家はとにかく広く、1階に7部屋、2階に3部屋もあり、作業所と倉庫が併設されている。さらに家の裏には約300平米の畑があり、立派なびわの木が2本も植えられていた。時期になると実をつけるらしい。空き家オーナーの寺崎さん(仮名)は伊藤さんと「今なんてスーパーでびわを売ってるじゃないですか」「昔はどこのうちにもあったのにねえ」なんて会話をしている。畑の奥は竹林になっていて、春先にはたけのこが取り放題だという。(ご近所さんの植えた竹が繁殖してしまったらしい。)
畑とびわ・たけのこ付きの一軒家は、お値段なんと150万円(応相談)だ。

畳もそれほど痛んでおらず、ぼろぼろになった障子を張り替えればすぐにでも住めそうな部屋もある。採光もいい。作業所と倉庫については使われなくなって久しいのかだいぶ荒れた様子だった。昔使われていたというしいたけの乾燥機や巨大なざるが残されている。台所には食器棚が、和室には日本人形が置かれたままで、こういった家財道具の処分についてもどうするか考えないといけないのだなと思う。(基本的にはオーナーさんと相談。)

この家について特筆すべきは薪焚きの風呂だ。
バスタブのちょうど外の土間に薪を焼べる場所がある。(写真をとらなかったのが残念で仕方ない。)寺崎さんが「ボイラーをつけないとだめだな」なんて言うので「(薪で焚いてみたいので)このままがいいです!」と主張したら「誰かが薪を焼べていないと温度が下がってしまう」と却下された。なるほど、それはひとりでは無理だ。しかし、ボイラー併設という手もあると教えてもらった。もっとも現在では薪の入手も難しいという問題もあり、薪焚きは現実的ではないようだった。

トイレについては汲取式だが、洋式風の便座が据え付けられていた。
汲取式を水洗にリフォームしたい場合、1簡易水洗にする、2下水道をひく、3浄化槽を設置する、という方法があるらしい。1簡易水洗はその名の通り、一見水洗だが中身は汲取式のままというもっとも安価な手段だが、水を一緒に流すために汲取回数が増えるというデメリットがある。2下水道が近くまでひかれていれば比較的安く工事ができるそうだが、下水道が遠い場合は3浄化槽を設置することになる。台所排水と合わせて合併浄化槽を設置するのが一般的なようで、費用としては100万程度かかるが国から補助金も出るらしい。このエリアは家の前まで下水道は通っているが、工事費とべつに負担金15万円が必要とのことだった。

寺崎さんは、家の目の前の小川をはさんですぐ向かいに住んでいるという。今もしいたけ農家を営んでいるそうで「ここに来たらしいたけ食べ放題だよ」と言ってくれた。


【今日のまとめ】

今回は売買物件だったのだが、なんというか、家を所有することの責任を感じた。それまでは「家を買ったほうが(いろんな意味で)面白そう」と思っていたが、「とりあえず賃貸でもいいかもしれない」と尻込みする気持ちが生まれた。とは言っても、どちらとも決めるつもりはまだない。今後なるようになるだろう。
(余談だが、自分のトイレに対するこだわりにはじめて気がついた。トイレで考えごとをするほうだからか、可能な限り快適な空間にしたいらしい。)
部屋数といい畑といい、5〜6人でシェアするにはかなりいい物件だと思うのだが、いかんせんひとりでは広すぎる。シェアしたい方はぜひご連絡ください。

続きはこちら:豊後高田市で家を探す【その3】