国東市地域おこし協力隊になってみた。【その2】

前回の記事:国東市地域おこし協力隊になってみた。【その1】

私は、国東市役所の「活力創生課 地域支援係」に所属していた。
基本的には市役所勤務で、電話を受けるときには「活力創生課の荒井です」と名乗る。月16日勤務、月給16万円。社保完備、家賃補助(5万円まで全額市が負担)、交通費あり、残業代なし(時間外が発生する場合は振替)、サビ残可。
休日は、基本的には自分で決められる。(イベント等で出勤を頼まれることはたまにある。)平日5連休とって9連休にしても、「新潟帰るの?気をつけていってらっしゃい」と笑顔で送り出してくれる大らかさ。地域支援係所属の他の協力隊となるべくお互いの休日が被らないようにする程度の調整はしたが、休日に関してはかなり自由だった。

所属部署によって、業務の内容は大きく異なる。私がこの1年間で、国東市の地域おこし協力隊として実際に行った業務はだいたい以下の5つだ。
 1.空き家バンクの運営
 2.婚活イベントのスタッフ
 3.国東半島芸術祭関連
 4.DIY講座と体験ツアー
 5.ふるさと納税の事務作業


【空き家バンクの運営】

もともと募集要項にあった、協力隊のメイン業務(のはず)になる。

具体的には、市内の空き家物件情報を登録する「空き家バンク」のホームページの管理・運営と、その物件を見学したいという移住希望者(具体的にはまだ全然考えてないけれどちょっと見てみたい、という層も含む)の現地案内などを行う。

「空き家を登録したい」という連絡が来たら、まず現地の調査に行く。築何年ほどの物件か、補修が必要な箇所があるか、電気・水道・ガスは現状どうなっているか、ペットを買ってもよいか等、所有者さんに聞き取りを行い、データを起こす。
その後ホームページに掲載し、「物件を見たいです」と連絡が来たら「空き家バンク利用者登録」をしてもらってから、実際に現地を案内する。
とはいえ、空き家バンク担当の市の職員さんもひとりいるので、どちらかといえば職員さんの補佐(見学希望者が同日に複数グループいる場合の案内等やエクセルによるデータ作成)が主な業務内容だ。


【婚活イベントのスタッフ】

国東市主催で数年続けている、年2〜3回の婚活イベント。
最近は、イベントで出会い結婚したカップルも現れ、今後も続いていくだろう地域支援係の業務のひとつ。
具体的には、事前の下見やチラシの印刷、バスツアーの同乗、配膳・お茶出し等、すでに企画されているイベントのスタッフとして参加する。(「今度こんな企画をやってみたいです!」と企画書を出して通れば実現可能だと思う。)


【国東半島芸術祭関連】

2014年秋に豊後高田市と共同で開催された「国東半島芸術祭」。イベント自体は終わってしまったが(2016年3月時点で次期開催の予定は特にない)、国東半島の歴史や地形を踏まえて作られた作品たちはほぼそのまま残されている。それを活用するため、約1か月に渡って作品鑑賞バスツアーやコンサートなど、芸術祭の関連イベントが行われた。企画会議、のぼりの設置等の事前準備や、大学生の作品制作の手伝い、バスツアーの同乗等週末のイベントにスタッフとして参加した。
企画提案をさせてもらう余地はあったが、そこまで手がまわらず。でも楽しかった。


【DIY講座と体験ツアー】

協力隊に着任してすぐ、職員さんから「秋頃に2泊3日で空き家見学ツアーを企画してほしい」と言われた。「空き家を見学してもすぐに住める物件は少なく、結局初期費用がかさんでしまうために若年層は移住しにくい。できる範囲のことはなるべく自分で家を改修できるようになれば、移住へのハードルが下がるのではないか」ということを主張してみたら、今冨建築の今冨さんを紹介してもらった。大工さんにとって、素人に技術を教えることは自分たちの首を絞めることにもつながるはずだが、彼は「移住者が増えて国東に活気が出てくれば、それはきっと自分たちにとってもプラスになると思う」という長期的な目線を持って全面的に協力してくれた。
協力隊と今冨さんで話しあった結果、国東市民を対象にDIY講座(月に1回、全3回)を開講し、市外の方に体験してもらうというスタイルでのツアーを組むことになった。空き家見学では、改修しがいのある、雰囲気はあるがそれなりに痛みもある物件を見てまわり、すでにDIYで古い空き家を直して住んでいる移住者さんたちの家にお邪魔して話を聞くという時間も設けた。
講座もツアーもどちらも好評だったので、これはおそらく続けていくのではないかと思う。


【ふるさと納税の事務作業】

地域支援係にはもうひとつ業務があった。ふるさと納税だ。
前年までは年間で数百万程度だったが、2015年は担当者が力を入れて全国で10位という寄附額を達成。それはめでたいのだが、その結果大量の事務作業が発生し、職員さんたちではどう考えても仕事が回りきらず協力隊に仕事がきた。6月から9月までは、エクセル入力、データチェック、封詰め等、完全に事務作業をしていたと思う。10月以降は臨時職員さんが来てくれてだいぶ減ったが、年末の書き入れ時(という表現が正しいのかはわからないが)までは日常的に手伝っていた。
ただし、2016年度から新たにふるさと納税係ができたため、おそらくもうこの仕事はないだろう。ちなみに職員さんたちは「本来なら協力隊の業務ではないのに申し訳ない」と言ってくれて、忙しい最中に焼き肉に連れていってくれたということを一言申し添えておきたい。
時には、誰も予想もしなかった仕事が大量発生することがある、ということだ。


他の自治体の地域おこし協力隊の話を聞いていると、国東市と協力隊の関係性は比較的バランスがいいのではないかと思う。そこそこ管理されていて、そこそこ自由がある。
自治体によって協力隊の立場は全く違う。かといって「どの自治体がいい」ともいえない。ある程度管理されるほうがあっているという協力隊もいるし、自由がなければ生きられないような協力隊もいる。同じ自治体で同じ待遇を受けていても、楽しんでいる協力隊と苦しんでいる協力隊がいることもある。とにかく相性だ。
協力隊になりたいなら、一度と言わず現地に足を運んでみること。もしすでに協力隊がいる自治体ならば(なるべく周りに職員さんのいないところで)話を聞いてみること。そして、協力隊から聞いた話はあくまでも参考程度に留めておくこと。あとは自分の感覚がOKを出せば、楽しい協力隊ライフが送れるのではないかと思う。

国東市地域おこし協力隊になってみた。【その1】

国東半島に引っ越して以来、あまりに満たされすぎていてブログを1年間放置してしまったため(参考記事:国東半島はあの世に限りなく近いと思う。)、地域おこし協力隊の面接日程が決まったところでブログ記事が終わっていた。
「協力隊」の検索ワードで来る人も多いようなので、その後を振り返りたいと思う。

ここまでの経緯:
 国東市の地域おこし協力隊に応募する。
 豊後高田市でも地域おこし協力隊の募集が始まり、迷う。


【国東市地域おこし協力隊】

平成27年度当時、国東市ではは2つの課で協力隊を募集していた。

・活力創生課−地域支援係(空き家バンク担当・婚活担当)
・農政課(オリーブ普及担当)

(正確には活力創生課−産業創出係でも協力隊を募集していたが、ここは事前に内定でほぼ決まっており応募は実質受け付けていなかったようだ。)

新潟での経験から「農業振興というのはあちこちにいろいろな事情があってものすごく難しい」という(あくまでも個人的な)結論に至っていた私は、迷わず活力創生課に応募した。

提出書類は、履歴書(応募用紙)とA4のレポート1枚。面接官は4人ほどだったと思う。

面接の翌日、早くも合格だと電話連絡が来た。面接後も数日間国東半島に滞在して観光する予定だったが、4月から住む家を探すため急遽国東市役所に向かうことになった。


【国東市役所へ】

市役所の活力創生課では、いつも物腰柔らかな電話をくれる山岡さん(仮名)が待っていてくれた。
空港のそばにはアパートもたくさんあるけれど、空き家バンクの登録物件に住むことも可能だということ。そして、家賃は5万以下なら市が補助してくれるという話を聞いた。

せっかくならば空き家に住みたい。
しかし、空き家バンクの物件は古い建物が多く、特に修理もせずにすぐ住めるような物件はほんの数軒に限られるという。物件ファイルを見せてもらい、空港から徒歩15分ほどの比較的新しい一軒家と、空港や市役所からは遥か離れた旧国見町の集合住宅の分譲物件のふたつを見せてもらうことにした。

※ 国東市の空き家バンクの物件は、基本的には所有者さんに事前に連絡し、鍵を借りて見学させてもらうことになる。市役所で鍵を管理している物件も一部あるし、当日でも連絡さえつけば見学は可能だが、見学したい物件があるならば事前に連絡を入れておくと確実かつスムーズに動ける。


【国東市における地域おこし協力隊】

山岡さんが所有者さんに連絡を入れている間、他の職員さんが話しかけてくれた。

「国東市に来てこんなことがしたいというような希望はある?」と聞かれたので、「新潟では趣味で農家さんに話を聞きにいってフリーペーパーを作ることをしていたので、国東でもそういうのを作りたいとは思っています」と答えると「それは協力隊ではできないかもしれないなあ」と言う。

募集要項では「空き家バンク担当」「婚活担当」と別々に募集をしていたけれども、どちらも「活力創生課・地域支援係」に属する仕事だということ。そして、係内で担当が明確に分かれているわけではなく、係の仕事をみんなで助け合ってやっているのだということ。
「空き家バンク担当だから婚活の仕事はしないっていうんじゃなくて、イベントなんかは一緒に手伝ってもらうことになる」「地域支援係にもいろいろな仕事があるから、それ以外のことを協力隊としてやるのは難しいかもしれない」とのことだった。

この時の職員さんの説明は、結果的にとても正確だった。

もともとフリーペーパーは趣味として余暇に作っていたものだったし、協力隊に対して何か夢や希望があるわけではなく、言ってみればお金のために応募したようなものなので、それで構わないと伝えた。


結局、片方の物件はその日に所有者さんと連絡がつかず、翌日改めて見に行った。
両方見た結果、一軒家はあまりに広かったので、旧国見町の集合住宅に住むことにした。元洋品店だった物件はメゾネットタイプで、1階の表が店舗、奥がキッチンとリビングになっている。2階にも2部屋あり、家賃は3万5千円(市役所負担)。
山岡さんが契約等を済ませておいてくれるというので、あとは4月に引っ越してくるだけになった。

続きはこちら:国東市地域おこし協力隊になってみた。【その2】

豊後高田市で家を探す【その3】

前回の記事:豊後高田市で家を探す【その1】
      豊後高田市で家を探す【その2】

翌日は、真玉温泉の奥にある空き家へ向かった。
温泉施設「スパランド真玉」の前を通り過ぎながら「この近くなら風呂が多少壊れていても温泉に通えてむしろ素敵」という妄想が一瞬膨らむが、伊藤さん(仮名)の車が容赦なくどんどん山へと向かうので諦める。ゆるく曲がった道の先に突然立派な石造りの鳥居が現れたりして、なんだかわくわくする土地だ。崖の上へと続く謎の階段、お寺や磨崖仏(らしきもの)、ジブリ映画に出てきそうなどっしりとした木。車を停めて見てまわりたい衝動に駆られながら伊藤さんを追うと、崖のふもとに目的の家があった。車から降りて開口一番「ここすごいですね!お寺とかいっぱいあって!」と伊藤さんとオーナーの小川さん(仮名)に言うと、「ふーん、そういうもんかねえ」とふたりともぴんとこない様子だった。


【空き家を見学する】

この家の値段は50万円(応相談)。いったいどんな家なのかと正直不安もあったが、玄関を入ると思っていたよりも明るく小綺麗だった。平屋建ての空き家は以前雑貨屋だったそうで、家の一部が店舗スペースになっている。ガラスの引き戸はカーテンがかけられていて、こぢんまりとしたスペースには今も商品棚が置かれていたままだ。

間取りによると、家全体が裏手の崖に沿ってすこし歪な形になっている。和室が5部屋並んでいるが、奥の2部屋は崖が近いために空気が通らず、湿気で畳がだいぶ痛んでいた。(人が住んでいれば大丈夫だそうだ。)台所に続く和室には掘りごたつが設けられていて、思わずテンションがあがる。昔は練炭で暖をとっていたそうだが、今は白熱灯が設置してある。こたつ布団があればすぐにでも使えそうだ。
小川さんによると、ガス水道は使わなくなって10年ほど経っているとのこと。詳しいことは点検しなければわからないが、おそらく改修が必要だという。風呂のボイラーも壊れているので直さなければ使えない。改修費用がどうしてもかかってしまうため「買った人の好きなように直してもらえればそのほうがいいかと思って」という意味でこの価格だそうだ。
肝心(?)のトイレは当然汲取式で、なぜか極端に狭い。昔ながらの段差のある和式トイレに洋式便座が設置されているのだが、座るとすぐ目の前が扉という配置でどう考えても落ち着かない。(この物件最大のネックだ。)しかもこのあたりは下水道が通っていないという。改修するならば合併浄化槽になるが、トイレが台所と離れているため費用は嵩むだろうとのお見立てをいただいた。

「ここらへんも空き家が多いんだよ」と小川さんは言った。「ほら」と示された田んぼの向こうには、1階部分が崩れかけている2階建ての立派であっただろう家が見える。「ああなったらもう壊すしかない」らしい。伊藤さんが「今、大家さんが責任を持って壊さないといけないような法律をつくってるところなんだわ」と教えてくれた。そうか、もしこの家を買ったとしたらいずれはこの家を売るか壊すかしなければならないのだな、と考える。
(参考:空家等対策の推進に関する特別措置法案(衆議院)

「(リフォームに興味があって)床の張り替えとかしてみたいんです」とふたりに話すと、「ちょうどいい、隣が大工さんだから」と小川さん。さらに「ここのすぐそばに仙人みたいなおじいちゃんが住んでいて、豊後高田市に移住してもう10年になるの。一度話を聞きにいってみるといいかも」と伊藤さんが教えてくれた。素敵なご近所さんがいらっしゃるようで、一層この物件に興味がわいた。


【今日のまとめ】

土地の雰囲気、店舗スペース、掘りごたつ。(トイレ以外は)とても魅力的な家だった。
伊藤さんに「結構いいなって思ってます」と話すと、まずは業者さんにガス水回りの点検をしてもらって、改修が必要かどうか、必要であればいくらかかるか見積りを出してもらうといいと教えてくれた。そこから先は市役所を介さず、私とオーナーである小川さんの間のやり取りになる。(トラブル防止のために不動産業者が入るが、その費用は市が負担してくれる。)
その一方で、やはり所有はちょっと…という気持ちもまだある。1年くらい賃貸に住んでみてからもう一度考えればいいんじゃないの?と、私の理性は言っている。今回は賃貸物件をひとつも見なかったし、もう少し時間をかけて見てまわってもいいかもしれない。