豊後高田市で家を探す【その3】

前回の記事:豊後高田市で家を探す【その1】
      豊後高田市で家を探す【その2】

翌日は、真玉温泉の奥にある空き家へ向かった。
温泉施設「スパランド真玉」の前を通り過ぎながら「この近くなら風呂が多少壊れていても温泉に通えてむしろ素敵」という妄想が一瞬膨らむが、伊藤さん(仮名)の車が容赦なくどんどん山へと向かうので諦める。ゆるく曲がった道の先に突然立派な石造りの鳥居が現れたりして、なんだかわくわくする土地だ。崖の上へと続く謎の階段、お寺や磨崖仏(らしきもの)、ジブリ映画に出てきそうなどっしりとした木。車を停めて見てまわりたい衝動に駆られながら伊藤さんを追うと、崖のふもとに目的の家があった。車から降りて開口一番「ここすごいですね!お寺とかいっぱいあって!」と伊藤さんとオーナーの小川さん(仮名)に言うと、「ふーん、そういうもんかねえ」とふたりともぴんとこない様子だった。


【空き家を見学する】

この家の値段は50万円(応相談)。いったいどんな家なのかと正直不安もあったが、玄関を入ると思っていたよりも明るく小綺麗だった。平屋建ての空き家は以前雑貨屋だったそうで、家の一部が店舗スペースになっている。ガラスの引き戸はカーテンがかけられていて、こぢんまりとしたスペースには今も商品棚が置かれていたままだ。

間取りによると、家全体が裏手の崖に沿ってすこし歪な形になっている。和室が5部屋並んでいるが、奥の2部屋は崖が近いために空気が通らず、湿気で畳がだいぶ痛んでいた。(人が住んでいれば大丈夫だそうだ。)台所に続く和室には掘りごたつが設けられていて、思わずテンションがあがる。昔は練炭で暖をとっていたそうだが、今は白熱灯が設置してある。こたつ布団があればすぐにでも使えそうだ。
小川さんによると、ガス水道は使わなくなって10年ほど経っているとのこと。詳しいことは点検しなければわからないが、おそらく改修が必要だという。風呂のボイラーも壊れているので直さなければ使えない。改修費用がどうしてもかかってしまうため「買った人の好きなように直してもらえればそのほうがいいかと思って」という意味でこの価格だそうだ。
肝心(?)のトイレは当然汲取式で、なぜか極端に狭い。昔ながらの段差のある和式トイレに洋式便座が設置されているのだが、座るとすぐ目の前が扉という配置でどう考えても落ち着かない。(この物件最大のネックだ。)しかもこのあたりは下水道が通っていないという。改修するならば合併浄化槽になるが、トイレが台所と離れているため費用は嵩むだろうとのお見立てをいただいた。

「ここらへんも空き家が多いんだよ」と小川さんは言った。「ほら」と示された田んぼの向こうには、1階部分が崩れかけている2階建ての立派であっただろう家が見える。「ああなったらもう壊すしかない」らしい。伊藤さんが「今、大家さんが責任を持って壊さないといけないような法律をつくってるところなんだわ」と教えてくれた。そうか、もしこの家を買ったとしたらいずれはこの家を売るか壊すかしなければならないのだな、と考える。
(参考:空家等対策の推進に関する特別措置法案(衆議院)

「(リフォームに興味があって)床の張り替えとかしてみたいんです」とふたりに話すと、「ちょうどいい、隣が大工さんだから」と小川さん。さらに「ここのすぐそばに仙人みたいなおじいちゃんが住んでいて、豊後高田市に移住してもう10年になるの。一度話を聞きにいってみるといいかも」と伊藤さんが教えてくれた。素敵なご近所さんがいらっしゃるようで、一層この物件に興味がわいた。


【今日のまとめ】

土地の雰囲気、店舗スペース、掘りごたつ。(トイレ以外は)とても魅力的な家だった。
伊藤さんに「結構いいなって思ってます」と話すと、まずは業者さんにガス水回りの点検をしてもらって、改修が必要かどうか、必要であればいくらかかるか見積りを出してもらうといいと教えてくれた。そこから先は市役所を介さず、私とオーナーである小川さんの間のやり取りになる。(トラブル防止のために不動産業者が入るが、その費用は市が負担してくれる。)
その一方で、やはり所有はちょっと…という気持ちもまだある。1年くらい賃貸に住んでみてからもう一度考えればいいんじゃないの?と、私の理性は言っている。今回は賃貸物件をひとつも見なかったし、もう少し時間をかけて見てまわってもいいかもしれない。

豊後高田市で家を探す【その2】

前回の記事:豊後高田市で家を探す。【その1】

翌朝、豊後高田市役所で伊藤さん(仮名)と待ち合わせた。
この日向かった空き家は旧香々地町に位置しており、市役所から車で約30分ほどだという(最寄りの宇佐駅からは約40分)。伊藤さんの運転する車を追って、海沿いの国道213号線を北へ走る。この道路は「日本の夕日百選」にも選ばれた真玉海岸を通る眺めのいい道で、バスも通っている(1日8本程度)。スーパーやホームセンターも点在する比較的便利な道だ。
213号を逸れ、川沿いを山のほうに入っていくと田畑が広がっている。(これだけ国道から離れてしまうと送迎なしで人に来てもらうのはちょっと無理だな、と思う。)川沿いなので圧迫感はないが、自転車どころか人ともすれ違えないのではないかと思うほど細い道を進み、目的地にたどり着いた。


【空き家を見学する】

大正時代に建てられたというその家はとにかく広く、1階に7部屋、2階に3部屋もあり、作業所と倉庫が併設されている。さらに家の裏には約300平米の畑があり、立派なびわの木が2本も植えられていた。時期になると実をつけるらしい。空き家オーナーの寺崎さん(仮名)は伊藤さんと「今なんてスーパーでびわを売ってるじゃないですか」「昔はどこのうちにもあったのにねえ」なんて会話をしている。畑の奥は竹林になっていて、春先にはたけのこが取り放題だという。(ご近所さんの植えた竹が繁殖してしまったらしい。)
畑とびわ・たけのこ付きの一軒家は、お値段なんと150万円(応相談)だ。

畳もそれほど痛んでおらず、ぼろぼろになった障子を張り替えればすぐにでも住めそうな部屋もある。採光もいい。作業所と倉庫については使われなくなって久しいのかだいぶ荒れた様子だった。昔使われていたというしいたけの乾燥機や巨大なざるが残されている。台所には食器棚が、和室には日本人形が置かれたままで、こういった家財道具の処分についてもどうするか考えないといけないのだなと思う。(基本的にはオーナーさんと相談。)

この家について特筆すべきは薪焚きの風呂だ。
バスタブのちょうど外の土間に薪を焼べる場所がある。(写真をとらなかったのが残念で仕方ない。)寺崎さんが「ボイラーをつけないとだめだな」なんて言うので「(薪で焚いてみたいので)このままがいいです!」と主張したら「誰かが薪を焼べていないと温度が下がってしまう」と却下された。なるほど、それはひとりでは無理だ。しかし、ボイラー併設という手もあると教えてもらった。もっとも現在では薪の入手も難しいという問題もあり、薪焚きは現実的ではないようだった。

トイレについては汲取式だが、洋式風の便座が据え付けられていた。
汲取式を水洗にリフォームしたい場合、1簡易水洗にする、2下水道をひく、3浄化槽を設置する、という方法があるらしい。1簡易水洗はその名の通り、一見水洗だが中身は汲取式のままというもっとも安価な手段だが、水を一緒に流すために汲取回数が増えるというデメリットがある。2下水道が近くまでひかれていれば比較的安く工事ができるそうだが、下水道が遠い場合は3浄化槽を設置することになる。台所排水と合わせて合併浄化槽を設置するのが一般的なようで、費用としては100万程度かかるが国から補助金も出るらしい。このエリアは家の前まで下水道は通っているが、工事費とべつに負担金15万円が必要とのことだった。

寺崎さんは、家の目の前の小川をはさんですぐ向かいに住んでいるという。今もしいたけ農家を営んでいるそうで「ここに来たらしいたけ食べ放題だよ」と言ってくれた。


【今日のまとめ】

今回は売買物件だったのだが、なんというか、家を所有することの責任を感じた。それまでは「家を買ったほうが(いろんな意味で)面白そう」と思っていたが、「とりあえず賃貸でもいいかもしれない」と尻込みする気持ちが生まれた。とは言っても、どちらとも決めるつもりはまだない。今後なるようになるだろう。
(余談だが、自分のトイレに対するこだわりにはじめて気がついた。トイレで考えごとをするほうだからか、可能な限り快適な空間にしたいらしい。)
部屋数といい畑といい、5〜6人でシェアするにはかなりいい物件だと思うのだが、いかんせんひとりでは広すぎる。シェアしたい方はぜひご連絡ください。

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豊後高田市で家を探す【その1】

「国東半島に住みたい!」と一度思ってしまったら居ても立ってもいられず、とりあえずもう一度現地に行ってみようと決めた。航空券を手配したところまでは良かったのだが、しばらく慌ただしく過ごしていて碌に下調べもできないまま当日を迎えてしまった。


【大分に行く】

大分空港につき、とりあえずレンタカーを借りる。(車がないと基本的に生活できない。)
しかし向かう当てがないことに気づき、とりあえず豊後高田市役所に電話をした。
「えーと、あの、豊後高田市に移住したいんですけれども…」と要領を得ないままに言うと、受付の方が地域活力創造課につないでくれた。そこでもう一度、豊後高田市に住みたいこと、空き家バンクに興味があること、そしてもうすでに大分に着いてしまったことを伝える。「資料でもいただければと思いまして」とさも考えていたかのように付け加えると、職員さんは快く承諾してくれて「市役所の2階の奥です」と教えてくれた。

豊後高田市は「住みたい田舎」ランキングで全国1位になったこともあり、すでに転入数が転出数を超えているという、いわば「成功例」である。市役所の伊藤さん(仮名)は、「移住は順調に進んでいるので、定住を進めていこうとしているところです」「今住んでいる方々にとって住みやすい町でなければ、定住してもらえませんから」と話してくれた。用意してくださった資料によると子育てや教育にも力を入れているらしく、市役所のすぐ隣の図書館も素晴らしく綺麗で居心地が良い。
移住関連では、空き家の改修に補助金が出たり、空き家の見学ツアーや市内で一定期間体験移住ができるという制度もある。新規就農者支援にも取り組んでいるので、農業に興味のある人なら「地方に暮らしながら農業を営む」体験もできそうだ。


【空き家リストを閲覧する】

空き家バンクを利用したい場合は、はじめに「利用希望登録」が必要だ。
本来であれば事前に登録しておくと話が早いのだが、もちろんそんなことはしていない。とはいえ、その場で登録申請書を書くと早速分厚い物件ファイルを閲覧させてもらえた。気になった物件をチェックしていく。基本的には賃貸が多く、売買物件は数件程度。賃貸の相場はだいたい月1万円から5万円ほど。月1万の物件はどこかしら改修が必要で、改修費用を自分で持つ代わりに毎月の費用が抑えられる仕組みになっている。長く住むのであれば自分で改修するほうが得ともいえるが、すぐ住みたいのであればもう少し家賃を払ったほうが楽だと個人的には思う。(ちなみに月1万の物件はすべてトイレが汲取式だった。)

すべての資料に目を通し、賃貸2件売買2件の計4件をピックアップした。伊藤さんに「大分には明後日までしかいないんですが…」と切り出すと、「こちらで大家さんに連絡をとってみて、もしご都合つく方がいらっしゃったらご連絡しますね」と笑顔で答えてくださった。ありがたい。
その後電話をいただき、翌日に1件、さらに翌日にもう1件連れていってもらえることになった。偶然どちらも売買物件で「これは買う流れなんだろうか」とこっそり思う。


【今日のまとめ】

移住しようと豊後高田市に向かうなら、
  1.「豊後高田市IJU(移住)支援サイト」へアクセス。
  2.空き家バンクに興味がある場合「利用希望登録」の申込書と誓約書をダウンロードして記入。
    送付またはFAXで申し込む。
  3.支援サイト上でも物件の概要は見ることができる。
    気になる物件があったら問い合わせると、詳細を教えてくれる。

この物件を見たい!と決めたら、市役所がオーナーとの日程調整をしてくれる。優しく対応してもらえるので気軽に連絡をとってみるといい。数件アポをとってから豊後高田市に向かうと、無駄がなく見てまわれるだろう。

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